子宮内ディスバイオシス

子宮内ディスバイオシスとは、子宮内膜に存在する細菌叢(マイクロバイオーム)の異常を指します。通常、健康な子宮内膜には多様な細菌が存在しており、その中でもラクトバチルス属の細菌が主に占めることで、感染から保護し、炎症を抑える役割を果たしています。しかし、何らかの要因でこの細菌バランスが崩れると、病原性細菌が増殖し、ディスバイオシス(微生物バランスの乱れ)が生じます。

原因とリスク要因

子宮内ディスバイオシスの原因は明確に解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。例えば、抗生物質の過剰使用は、ラクトバチルス属の細菌を減少させ、病原性細菌の増殖を助長する可能性があります。また、性交渉の頻度、パートナーの数、過去の性感染症の履歴もリスク要因となります。その他、ホルモンの変動、免疫システムの異常、ストレスも細菌バランスに影響を与えることがあります。

症状と影響

子宮内ディスバイオシスが進行すると、以下のような症状が現れることがあります:
・不正出血
・下腹部痛
・おりものの異常
・妊娠しにくい(不妊)
さらに、ディスバイオシスは子宮内膜炎や慢性骨盤痛症候群のリスクを高め、妊娠した場合には流産や早産のリスクも増大します。また、体外受精(IVF)の成功率にも影響を与えることが示されています。これは、異常な細菌環境が胚の着床に悪影響を及ぼし、子宮内の炎症を促進するためです。

診断と治療

子宮内ディスバイオシスの診断には、子宮内膜からのサンプルを採取し、次世代シーケンシング技術やPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を用いて、細菌叢の構成を分析する方法が用いられます。これにより、ラクトバチルス属の細菌の割合や、病原性細菌の存在が確認されます。
治療には、主に抗生物質やプロバイオティクスの使用が考えられます。抗生物質は病原性細菌の除去を目的とし、プロバイオティクスはラクトバチルス属の細菌を補充して、正常な細菌バランスを回復させる役割を果たします。また、患者の生活習慣の見直しや、免疫機能の改善も治療の一環として重要です。

予防と管理

予防策としては、適切な性行動や衛生管理が推奨されます。また、免疫力を維持するためのバランスの取れた食事、ストレス管理、定期的な運動もディスバイオシスの予防に寄与します。さらに、自己判断での抗生物質の使用を避け、医師の指導のもとで適切に使用することが重要です。

子宮内ディスバイオシスは女性の生殖健康に大きな影響を与える可能性があるため、早期の診断と治療が求められます。症状が疑われる場合は、専門医の診察を受け、適切なケアを受けることが推奨されます。