産後の性交痛に悩むあなたへ―痛みの正体とケアの方法

「赤ちゃんを産んだ後、夫婦の時間が苦痛になった」――産後の女性からこうした声を耳にすることは少なくありません。産後の性交痛(セックスの際の痛み)は、決して珍しいものではなく、多くの女性が経験しています。にもかかわらず、誰にも相談できずに悩み続けるケースが非常に多いのが実情です。この痛みには、身体的・心理的な要因が複雑に絡み合っており、適切なケアによって改善する可能性があるものです。今回は、産後の性交痛に焦点をあて、その原因と対策について詳しく解説します。
痛みの背景にある身体の変化
出産後、ホルモンバランスが大きく変化し、特にエストロゲンの減少によって腟内の潤いが低下しやすくなります。これにより粘膜が薄くなり、わずかな摩擦でも痛みを感じるようになります。また、会陰切開や裂傷の傷跡が残っている場合、その部分が癒着したり、過敏になっていることもあります。さらに、骨盤の歪みや筋肉の緊張も性交時の違和感を引き起こす原因になります。
“心の緊張”が引き起こす痛み
「また痛かったらどうしよう」「夫に悪いと思われたら…」という不安や罪悪感は、身体の緊張を招き、痛みを強める一因となります。実際、産後の性交痛には心理的な影響も大きく、ストレスや自己否定感、夫婦間の温度差が背景にあることもあります。無理に応じることで関係性に亀裂が入るケースもあるため、“今はまだできない”という気持ちを素直に伝える勇気も必要です。
潤いと腟内環境の見直しを
潤滑ゼリーの使用や、腟の保湿剤によって一時的な痛みを緩和できる場合もあります。また、最近では腟内環境を整えるために、ラクトバチルス属の善玉菌を補うサプリメントが注目されています。これらのサプリは腟内のpHバランスを保ち、炎症の予防や粘膜の健康維持に寄与する可能性があり、長期的な改善にもつながると考えられています。
夫婦で共有したい“時間軸の違い”
出産という大きな出来事の後、女性の心と体には時間が必要です。一方、男性はその変化を理解しきれず戸惑うこともあります。だからこそ、率直なコミュニケーションが欠かせません。「怖い」「まだ痛む」「不安がある」という気持ちを言葉にすることが、夫婦の信頼関係を育てるきっかけにもなります。
性交痛は“我慢するもの”ではなく、“向き合うもの”。あなたの心と体の声に耳を傾け、必要なケアと対話を積み重ねていくことで、少しずつ安心できる時間を取り戻していけます。