アトロフィー性腟炎の治療法

アトロフィー性腟炎(または閉経後腟炎)は、主に閉経後の女性に見られる腟の炎症で、エストロゲンの減少により腟の粘膜が薄くなり、乾燥や萎縮が進行することで起こります。これにより、かゆみ、灼熱感、性交時の痛み、頻尿、尿意切迫感などの症状が現れることがあります。以下は、アトロフィー性腟炎の治療法についての詳細です。
局所エストロゲン療法
局所エストロゲン療法は、アトロフィー性腟炎の最も効果的な治療法とされています。これにより、腟の粘膜を再生し、潤滑性を改善することができます。
● エストロゲンクリーム: エストロゲンクリームを腟内に直接塗布する方法です。通常、クリームをアプリケーターを使用して夜間に腟内に挿入し、最初の数週間は毎日使用し、その後は週に2~3回に減らします。
代表的な薬剤:プレマリン(Premarin)クリーム、エストラセム(Estrace)クリーム
● エストロゲン腟錠: エストロゲンを含む腟錠を腟内に挿入する方法です。クリームと同様に、最初は毎日使用し、効果が安定したら使用頻度を減らします。 代表的な薬剤:バギフーム(Vagifem)
● エストロゲンリング: エストロゲンをゆっくりと放出するリングを腟内に挿入し、3か月ごとに交換する方法です。腟内で持続的にエストロゲンを供給するため、長期間にわたる管理が容易です。 代表的な薬剤:エストリング(Estring)
非ホルモン療法
エストロゲン療法が適さない場合、非ホルモン療法を検討することができます。
● 潤滑剤と保湿剤: 無香料・無刺激性の潤滑剤や腟保湿剤を使用することで、性交時の痛みや腟の乾燥を軽減することができます。これらは日常的に使用することが可能で、副作用も少ないです。
○ 潤滑剤:アストログライド(Astroglide)、K-Yジェリー
○ 保湿剤:レプリン(Replens)
● オスピミフェン(Osphena): オスピミフェンは経口で使用する非エストロゲン薬で、エストロゲンの作用を模倣して腟の組織を改善します。特に、エストロゲン療法が使用できない女性に適していますが、副作用として熱感や血栓リスクがあるため、使用には医師の指導が必要です。
● レーザー治療: モナリザタッチ(MonaLisa Touch)などのCO2レーザーを使用した治療法もあります。腟内の組織を刺激し、コラーゲンの生成を促進することで、腟の弾力性や潤滑性を改善します。この方法は非侵襲的で、短期間で効果を感じられることがありますが、複数回の治療が必要です。
生活習慣の改善
アトロフィー性腟炎の予防と症状の軽減には、生活習慣の改善も役立ちます。
● 定期的な性交または腟内刺激: 定期的な性交や腟内の刺激は、血流を促進し、腟の健康を維持するのに役立ちます。パートナーがいない場合でも、腟内潤滑を促進するためのマスターベーションが推奨されることがあります。
● 下着と衛生管理: 通気性の良い綿素材の下着を着用し、過度にきつい服装や下着を避けることで、腟内の乾燥や刺激を減らすことができます。また、腟洗浄や香りの強い石鹸の使用は避けるべきです。
● 適切な運動: 適度な運動は、全身の血流を改善し、ホルモンバランスを整える効果があります。特に骨盤底筋を鍛えるエクササイズ(ケーゲル運動)は、腟の健康にも寄与します。
医師との定期的な相談
アトロフィー性腟炎の治療を進める上で、定期的に医師と相談し、症状の進行や治療の効果を確認することが重要です。エストロゲン療法を受ける場合、乳がんや子宮がんのリスクがあるため、定期的な検診が必要です。
アトロフィー性腟炎は閉経後の女性に多く見られるものの、適切な治療を受けることで症状を大幅に改善することができます。自身の症状に最も適した治療法を見つけるためには、医師と十分に相談しながら治療を進めていくことが大切です。